ー庭の花ばなし

夜眠るネムノキは眠りの樹

また一つ私の好きな樹が花を咲かせました。今日はネムノキのお話。

目次
  1. ネムノキと梅雨
  2. ネムノキとは
  3. ネムノキは眠りの樹
  4. オジギソウもネムノキの仲間
  5. ネムノキは歌人の心も動かす
  6. まとめー田舎暮らし田舎の風景
ネムノキと梅雨

自宅までの道のり、自宅まではあと3分ほどの場所に、右手に山、左手には海が見える場所があります。
その右手の山の斜面から伸びた樹の枝は、道路の半分ほどまで枝を伸ばしています。
そして、その樹はこの梅雨の時期になると、たんぽぽの綿毛のようなピンクのグラデーションの花を咲かせるのです。

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ネムノキの花

長く地元を離れて、またこの地元へ戻ってきた時のこと。
いつも通る道に悠々と枝を好きなように伸ばしているネムノキが、雨に濡れても嬉しそうに咲くのを見て、
「雨の日も悪く無いなあ。」と思って少し気持ちが上向いた記憶があります。

スギやヒノキ、孟宗竹などがまっすぐ伸びていくのとは違って、自由奔放に枝を伸ばしたネムノキ。
田舎暮らしの中で、まだ迷いや不安や息苦しさのあった当時、小さな社会の中で、
どうにかネムノキのように自由で自分らしくありたいと思ったものでした。
そういう意味でも私にとってネムノキの花は、特別な花です。

ネムノキとは

ネムノキ/合歓(ごうかん)の木、眠りこ、眠りの樹
マメ科 ネムノキ属 落葉高木
分布.日本の本州以南、朝鮮半島、中国南部、イラン、アフガニスタン等

ネムノキの仲間は世界に約150種ほど存在すると言われていますが、
ほとんどは熱帯地方に分布しています。
観葉植物の「エバーフレッシュ」もネムノキ属ですが、このピンクの花を咲かせるネムノキだけは、
日本の路地(というより、山)でも生育できる耐寒性があります。

ネムノキは眠りの樹

ネムノキは、夜になると葉を閉じます。だから「眠りの樹」という名で呼ぶ地域もあります。
そして、ネムノキが夜に葉を閉じることをネムノキの就眠運動と言います。
正確に説明すると、ネムノキは「夜になると葉を閉じる。」というのは、
「外が暗くなったら葉が閉じる」のという意味ではなく、彼らの体内時計が夜だと判断して葉を閉じるのです。
不思議でしょ。

そして、今日は「夏至」一番日の長い日。です。
ネムノキの睡眠時間も、短くなるのでしょうか(笑)

そのメカニズムについて書き出すと、とてもとてもマニアックになりそうなので
「植物の運動を支配する鍵化学物質」という、かなり詳しく書かれている資料を見つけました。
ご興味ある方はそちらをご覧ください。

オジギソウもネムノキの仲間

そうそう、オジギソウで遊んだことありませんか?
オジギソウもネムノキの仲間です。オジギソウは葉っぱに触れると葉の先端から静かに閉じていきます。
とっても不思議ですよね。

マメ科の植物の中でも、ネムノキ属の仲間にはこのように樹自体にしっかりとした意思があるのではないか?
と思うほど面白い特性を持った子たちがいます。
そして、優秀な植物学者たちが挙ってその謎を解き明かそうとした。という。とても楽しそうな実験です。

↓オジギソウに触れたらどうなるのか、YouTubeの映像がありましたのでご興味ある方は見てみてください。

https://youtube.com/watch?v=S5rvpLnnsbk%3Frel%3D0
ネムノキは歌人の心も動かす

ネムノキは、日本には古くから自生する樹で、短歌や俳句の題材として、また「ネムの花」は晩夏の季語、
「ネムの実」は晩秋の季語として歳時記にも掲載されています。

私が一番共感した句は、兵庫県出身の女性の俳人のこの句です。

虹飛んで来たるかといふ合歓の花  細見綾子
「私は女であるためか、合歓を見ても美人などは連想しない。
夢とか、虹とか、そんなものを思い浮かべる。合歓は明るくて、暗い雨の日でも灯るように咲く。
合歓が咲くと、その場所が好きになるのだった」ー『伎藝天』角川書店

そうそう、この感覚!私が冒頭でネムの花に感じた感覚にとても近いなあ。と思ったのです。
そして、細見綾子さんは身近な植物や目にした花などから多くの俳句を読んでいらっしゃるのも、
私が身近に感じたきっかけなのかもしれません。

まとめー田舎暮らし田舎の風景

田舎暮らしの良さは、まさにこの手付かずの山々に、その植物がまさに今だと花を咲かせ、
実をつけ、命を繋いでい流のを、いつもみ続けていける。というところにもあります。

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田んぼにかかるように咲くネムノキは
きっと誰かが植えたものではなくて、どこからかタネがやってきてここで生きると決めたのかな。

田舎の風景は、都会から一度訪れただけではなんの変哲もない風景かもしれませんが、
時期を変え、何度も訪れていると、その土地の風景がどんどん変わっていくことに気づきます。
それは、大きなビルが建ったり、建物が壊されたりとかそう言った大掛かりなものではなく、小さな小さな変化です。
しかし、山の色が明らかに「春ですよ」と言っていますし、「緑が濃くて目が痛い」と
夏にきた都会暮らしの友人は言いました。
秋の田んぼ一面が金色で、風が吹くと「さらさら」と稲が風に吹かれる音がします。これは秋にしか聞けない音。

そうやって、日々の暮らしの中の微妙で、時としてダイナミックな変化を見つけるのがとても楽しみです。
では、今日はここまで。
今日まで最後まで読んでくださりありがとうございました。


1979年 鹿児島県出水郡長島町生まれ.大阪芸術大学 環境デザイン学科卒業。 個人住宅を主に扱う大阪市内の設計施工会社に入社。設計デザイン、現場管理と幅広く担当し暮らしの空間作りのアドバーザーとしての経験を積む。 住宅設計の中で、庭の暮らしへの役割や重要性に惹かれ、大手エクステリアメーカーへ移籍。関西・中部圏を中心にガーデンプランナーとしての経験を積む。 現在は、生まれ故郷鹿児島県の長島町にて、10数年のガーデンでの仕事の経験を活かしフリーランスのガーデンプランナーとして、個人及び企業向けのガーデンのデザインや、設計施工メンテナンスを手がける。 またガーデン等に関する講演活動、ガーデン関係のサイトの記事の監修、コラム記事執筆。プリザーブドフラワーアレンジ、その他ワークショップや教室講師等を中心に活動。 一級造園施工管理技士、一級土木施工管理技士、メディカルハーブセラピスト

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